ゴルフスイングの基本目的
ゴルフスイングの基本目的は、ボールを遠くに、真っ直ぐ、安定して飛ばす事です。(曲げるのは容易です。)
この目的通りにゴルフスイングが出来れば、ゴルフ本来の「自然やコース設計者との闘い」に挑む事ができます。
自己流手打ちスイングは、ミスを生む原因が無限に内在していて直しきれません。アメリカで標準の基本ゴルフスイングを理解し覚える方が、ずっと楽で早道です。
スイング理論1 より遠くに飛ばす
ボールをより遠くに飛ばすには、クラブヘッドの速度(目標方向成分)を上げる必要があります。そのためには、(1)から(3)が有効です。(瞬発力向上は除きます。)
(1)ダウンスイング初期の角速度を上げる
(a)大きな力で大きな角加速度
ダウンスイング初期は大きな角加速度で、短時間に角速度を上げる必要があります。
大きな角加速度を得るには、大きな力が必要で、それは大きな筋肉しか出せません。大きな筋肉は、体重を楽に支えている胴体の筋肉です。
腕や手の小さな筋肉で打つ「手打ちスイング」より、胴体の大きな筋肉を使う「体打ちスイング」(アメリカで標準のゴルフスイング)の方が、インパクト時のクラブヘッドの角速度は上がります。
(b)回転半径・速度・角速度・角加速度
回転半径[m]:クラブヘッドから回転軸までの距離[m]
速度[m/sec]=回転半径[m]×角速度[rad/sec]
角速度[rad/sec]:単位時間[sec]当たりの回転角[rad]
角加速度[rad/sec2]:角速度[rad/sec]の単位時間[sec]当たり変化量
角加速度は力に比例し、慣性モーメントに反比例します。
慣性モーメントは、質点の質量と、質点までの距離の2乗に比例します。
(ラジアン:1 [rad]=180/3.1415296[度])
(2)インパクト直前の回転半径を長くする
(a)ヘッドの速度
同じ角速度なら、回転半径(クラブヘッドから回転軸までの距離)が大きい方が、ヘッドの速度が上がります。同じクラブなら、回転軸の位置で回転半径が決まります。
(b)手打ちスイング
手打ちスイングでは、へその左前あたりが回転軸です。
手打ちスイングでは、インパクト直前に体の回転を止め、腕の動きが追いつくのを待ち、最後に手首をひねります。手や腕は手首と左肩関節を支点に動きます。
(c)体打ちスイング(アメリカで標準の基本スイング)
アメリカで標準の体打ちゴルフスイングは、背骨が回転軸です。
手打ちより回転半径が長くなります。背骨は安定してスイング出来る、クラブヘッドから最も遠い回転軸です。
(3)インパクト時にフェースを立てる
インパクト時にハンドファーストの形にすると、クラブシャフトが傾き、アイアンのフェース面は設計上のフェース角より立ち上がります。ボールに働く力の水平方向成分が増え、飛距離が伸びます。
6番アイアンのフェース面の傾きは、5番アイアンの設計上のフェース角に近くなります。
スイング理論2 真っ直ぐ
ボールを真っ直ぐ飛ばすには、ヘッドが、「スクエア」にボールに当たる必要があります。(衝突理論によります。)
スクエアとは、インパクトの瞬間に、ボールとフェースの接触点を含む水平面において、「クラブヘッドの運動方向」(青矢印)と「フェースの法線方向」(赤矢印)が一致することを言います。

「クラブヘッドの運動方向」と「フェースの法線方向」が一致してない、スライスの例を下に示します。黒点線矢印はボールの初期飛び出し方向で、黒実線矢印はカーブするボールの軌跡を表しています。

インパクトの瞬間に、ボールとフェースの接触点を含む水平面において、クラブヘッドがセットアップの時と同じ状態に戻れば、ボールは真っ直ぐ飛びます。
青矢印と赤矢印の向きを適切に選択すれば飛球は思い通り曲がります。上図で、黒点線矢印は、青矢印と赤矢印の間で、8:2 ~ 9:1で、赤矢印に近い向きになります。
スイング理論3 安定して
(1)フィードバックはかけられない。
遅い動作では、目と各筋肉からの情報を脳が知覚して、フィードバックをかけ、約0.2秒後に、動作の修正を行っています。ところが、ダウンスイングは0.2秒ちょっとで終了してしまいます。そのため、ダウンスイング中にフィードバックはかけられません。
フィードバックが出来ない状況で、ダウンスイングの動作を安定化させるには、以下の方法で毎回同じ動作を行う必要があります。
(2)決してふらつかない動作を行う。
体の重心が両足の端の外に出ると、体がふらつきます。動作中にふらつくと、次回はふらつかない様に、無意識に動作を変えてしまいます。安定して同じスイングを続けるには、重心が両足の端までは達しない動作が必要です。
(3)自由度が高い手と腕は、能動的に動かさない。
多くの関節を持ち、いくつもの筋肉で複雑に動く、自由度が高い手と腕は、能動的に動かさないことです。動作中のフィードバックは出来ないのですから、どれだけ練習を繰り返しても、自由度の高いや腕と手に、毎回寸分違わぬ動作をさせるのは不可能です。手打ちのリストターンを極めるのは、アマチュアゴルファーには無理だと理解下さい。
(4)個人の骨格・筋力・柔軟性で決まる、最も運動しやすい動作を行う。
フィードバックは出来ないのですから、筋肉でダウンスイング動作を制御することは出来ません。ダウンスイング中は、最も動き易い(=最もエネルギーが低い)動作を体にさせ続け、動作を安定させます。ダウンスイング開始点のフォームは、バックスイングで作り上げます。
(5)繰り返し練習して、脳(運動野)に筋肉の動きを予め覚えさせておく。
フィードバックが出来ないのですから、脳に出来るだけ単純化した動きを予め覚えさせておくしかありません。練習は、何も考えずに数多く繰り返すのでは無く、一打毎に一つ一つの運動を意識して行い、脳に覚えさせます。頭に記憶を定着させるには、1日の打球数の多さよりも、初めは数日おき、覚えたら忘れない様に1ヶ月おきに訓練を繰り返すのが効果的です。
理想のゴルフスイング
以上の事から、次の条件を満たせば良い事が分かりました。
・回転運動の主役は、胴体の筋肉(体幹)。
・回転軸は背骨。
・インパクト時は、ハンドファースト。
・体がふらつかないスイング。
・手と腕の能動的動作は行わない。
・個人の骨格・筋力・柔軟性によって決まる制御不要なダウンスイングを行う。
・ダウンスイング開始点の体の形はバックスイングで作り上げる。
基本的な方針
背骨を中心にして、上半身をバックスイングでひねり、これを戻す体幹の力を回転力に使います。
背骨のねじりを最大限にするため、背骨から頸椎までを真っ直ぐにします。
手は、腕とグリップをつなぐためだけに使います。
腕は、上半身の回転に引っ張られて、受動的に動きます。
バックスイング前半で上半身を十二分にひねっておくために、ひざを軽く曲げます。曲がっているひざが前方を向いている状態を保つと、下半身は回転出来ません。
バックスイング後半にコック動作をしておく事で、慣性モーメントを小さくしておきます。これによって、ダウンスイング初期には、クラブヘッドの遠心力が小さくなって体のふらつきが抑えられ、さらに、ダウンスイング初期の角加速度が大きくなります。
バックスイング後半のコック動作後、右ひざを軽く伸ばし、さらに体のねじれを大きくします。
インパクト直前に、クラブヘッドの遠心力に引っ張られてアンコック動作が行われ、回転半径が最大になります。アンコック動作終了のタイミングをインパクトまたは、インパクト直後に持ってくることで、ハンドファーストの状態が作れます。インパクト時の手と腕は、ハンドファースト以外はセットアップ時とほぼ同じ状態に戻ります。
フォロースルーは、飛んでいくゴルフボールに影響は与えません。しかし、インパクト後にふらつくと、次のゴルフスイングから、ダウンスイングのフォームを無意識に変えてしまいます。これを防ぐため、インパクト直後に慣性モーメントを極力小さくし、大きな筋肉と上方向への体の動きで回転運動のエネルギーを吸収します。
理想のゴルフスイングの方法論
グリップ
手は、クラブヘッドの遠心力に引っ張られて動きます。手に力を入れず、出来るだけ緩やかに握ります。静止摩擦力の高いクラブのグリップと手袋を用います。手の平の筋肉を厚くして、クラブのグリップと手の接触面積を増やします。
セットアップ
ひざを軽く曲げ、骨盤から頭まで、真っ直ぐに保ち、お尻を突き出して前傾します。
手首は、インパクト時にクラブが遠心力で手を引っ張る力が加わっても角度が変わらない形にします。(ゴルフクラブシャフトと左手前腕の角度をおよそ144度にします。)
腕は、重力に従って、真っ直ぐ降ろします。
手首と腕がこの状態のままで、背骨の傾斜角度と立ち位置を調整します。
全身を左右に動かし、リラックスさせ、柔軟性と筋力を上げます。
バックスイング前半
上半身をバックスイングの始めに十分にひねっておくため、軽く曲げたひざを前に向かせたまま、肩・腕・手首・手を動かさずに背骨を中心に回転運動を開始します。このワンピース・テイクバックの動きは、ダウンスイング時にボールに向かうクラブヘッドの回転面(軌道面)を決める動きにもなります。シャフトが水平になるまでワンピーステイクバックを行えば、上半身は十分にひねられています。
バックスイング後半
ワンピース・テイクバック終了後、高速で運動しているクラブヘッドの回転運動に沿って、自然にコック動作を行いつつ、右ひじを曲げながら腕を引き上げ、右足のひざを少し伸ばし下半身のねじれを付け加えていきます。これで、制御の必要の無いダウンスイングが行えるダウンスイングの開始点に到達します。
ダウンスイング
下半身のねじれを戻す動きを開始すると、上半身が引っ張られ回転を始めます。更に上半身に引っ張られ腕が降りてきます。手首は、コック状態を維持します。
インパクト直前に、アンコック動作を開始し、ハンドファーストの状態でクラブフェースがゴルフボールと衝突します。クラブはそこからさらに下がり、芝を削り、アイアンやウエッジの場合には必ずディボットが作られます。
フォロースルー
インパクト直後、アンコック動作を行い、右腕が水平になった時にはクラブは空を向かせます。左ひざは伸び、右足は目標に向かい、左足の隣に来ます。
一連の理想的ゴルフスイングの実際は、「ゴルフスイングの基本」のページをご覧下さい。